n8nとは?オープンソースのワークフロー自動化ツールをわかりやすく解説
n8nって何?Zapierとどう違うの?
無料って本当?どこまで使えるの?
プログラミングできないけど自分でも使える?
業務効率化やDX推進が叫ばれる中、ワークフロー自動化ツールへの関心が高まっています。ZapierやMakeといった有料サービスが主流ですが、コストや柔軟性の面で課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。
オープンソースでありながら高機能な自動化ツールがあれば、初期投資を抑えつつ自社に最適な業務改善を実現できます。しかし、n8nという選択肢があることを知らない方や、その特徴や導入方法がわからず踏み出せない方も少なくありません。
そこでこの記事では、n8nの基本概念から具体的な活用方法、他ツールとの比較、導入手順、メリット・デメリットまで詳しく解説します。
- n8nの基本概念と他の自動化ツールとの違いがわかる
- n8nで実現できる具体的な業務自動化の方法がわかる
- n8nの導入手順とメリット・デメリットがわかる
n8nとはどんなツール?

n8nは、業務プロセスを自動化するためのワークフローツールです。さまざまなアプリやサービスを連携させて、定型業務を自動で処理できます。
ここからは、n8nの基本的な特性について次の3つの観点から紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
オープンソースのワークフロー自動化ツール
n8nは、ソースコードが公開されているオープンソースソフトウェアとして提供されています。
このため、セルフホスト環境であれば完全無料で利用できる点が大きな特徴です。
ZapierやMakeといった有料の自動化ツールと同等の機能を、初期費用やライセンス料なしで導入できます。また、ソースコードにアクセスできるため、自社の要件に合わせた独自のカスタマイズも可能です。
セキュリティポリシーが厳格な企業でも、自社環境内でデータを完結させながら自動化を実現できるでしょう。
ただし「fair-codeライセンス」を採用しており、商用での再配布や有料サービス化には一定の制限があります。
ノーコード・ローコードで処理をつなぐ仕組み
n8nは、プログラミング知識がなくても業務フローを構築できる設計になっています。処理の単位を「ノード」と呼ばれるブロックで表現し、これをドラッグ&ドロップで配置していく仕組みです。
たとえば「Gmailで特定のメールを受信したらSlackに通知」といった流れを、視覚的に線でつないで作成できます。
基本操作はノーコードで完結しますが、より高度な処理が必要な場合にはJavaScriptコードも記述可能です。この柔軟性により、初心者から上級者まで幅広いユーザーに対応しています。
実際の業務フローは、トリガー(きっかけ)とアクション(処理)を組み合わせて構築されるため、直感的に理解しやすいでしょう。
クラウド版とセルフホスト版の2つの提供形態
n8nには、クラウド版とセルフホスト版の2つの利用形態が用意されています。
クラウド版は、n8nの公式が提供するホスティングサービスで、アカウント登録すればすぐに使い始められます。無料プランから用意されており、小規模な利用であれば十分に活用できるでしょう。
一方、セルフホスト版は、DockerやNode.jsを使って自社サーバーやローカル環境に構築する形式です。完全に無料で利用でき、実行回数やノード数の制限がない点が大きなメリットです。
企業の規模や要件、セキュリティポリシーに応じて最適な形態を選択できます。
n8nでできること

n8nを活用することで、日常業務のさまざまな定型作業を自動化できます。複数のツールやサービスを横断した処理も、ワークフロー一つで実現可能です。
ここからは、n8nで実際に実現できる機能について次の3つに分けて紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
SaaS同士をつないだタスク自動化
n8nは、700以上の外部サービスとの連携に対応しており、普段使っているツール同士を簡単につなげます。
たとえばGmailで特定の件名のメールを受信したら、その内容をGoogleスプレッドシートに自動記録する流れを作成できます。同時にSlackやMicrosoft Teamsへ通知を送ることも可能です。
各サービスの認証情報を保存しておけるため、一度設定すれば繰り返し利用できます。
ECサイトで注文が入ったら在庫管理システムと顧客管理システムを同時に更新する、といった複雑な連携も実現可能です。手作業でのデータ転記や情報共有が不要になり、業務スピードと正確性が大幅に向上するでしょう。
データの取得・整形・保存の一連処理
n8nでは、外部ソースからデータを取得し、必要な形式に加工して保存するまでの流れを自動化できます。
APIから取得したJSONデータを解析し、必要な項目だけを抽出して整形することが可能です。整形後のデータは、MySQLやPostgreSQLといったデータベースに直接格納できます。
また、n8n内蔵の「Data Tables」機能を使えば、外部データベースなしでもデータ保存が可能です。
複数の情報源から定期的にデータを収集し、一元管理するようなワークフローにも対応しています。データのクレンジングや重複排除といった前処理も、ノードを組み合わせることで実装できるでしょう。
AIや外部APIとの連携フローの構築
n8nは、OpenAI(ChatGPT)やGoogle Gemini、Mistralなど多様なAIサービスとの連携に標準対応しています。
受信したメール内容をAIで自動要約し、重要度を判定してカテゴリ分けすることも可能です。画像データをOCR処理して文字情報を抽出し、データベースに自動登録するといった高度な処理も実現できます。
HTTP Requestノードを使えば、独自のAPIや社内システムとも柔軟に連携可能です。AI Workflow Builder機能を活用すれば、自然言語でワークフローの要件を伝えるだけで、AIが自動的にフロー設計を提案してくれます。
これにより、AIを活用した業務改善がこれまで以上に身近になるでしょう。
n8nの主な特徴

n8nには、他の自動化ツールにはない独自の特徴がいくつかあります。特に開発の自由度と柔軟性において、大きな強みを持っている点もポイントです。
ここからは、n8nの代表的な特徴について次の3点を紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
ノードをつなぐビジュアルなフロー設計画面
n8nの最大の特徴は、直感的に操作できるビジュアルインターフェースです。
各処理を「ノード」という単位で表現し、キャンバス上で線でつなぐだけでワークフローが完成します。トリガーノード(処理の起点)から始まり、データ処理、条件分岐、外部サービス連携といった各ステップを視覚的に配置していく仕組みです。
ワークフロー全体の流れが一目で把握できるため、複雑な処理でも理解しやすくなっています。エラーが発生した際も、どのノードで問題が起きたかを視覚的に特定できます。
コードを読み解く必要がないため、非エンジニアでも業務フロー設計に参加できるでしょう。
条件分岐・ループ・エラー処理の柔軟な制御
n8nでは、プログラミングにおける基本的な制御構造をノーコードで実装できます。
IFノードを使えば「売上が一定額を超えたら管理職にアラートを送る」といった条件分岐が簡単に設定可能です。Loopノードを活用すれば、リストの全項目に対して順次処理を実行するような繰り返し処理も実現できます。
エラー処理についても専用のノードが用意されており、処理が失敗した場合の代替フローを設計できます。たとえばAPI接続に失敗したら、一定時間後に再試行する、あるいは管理者に通知するといった制御が可能です。
これらの高度な制御機能により、本格的な業務システムに匹敵する自動化を実現できるでしょう。
JavaScriptでの細かいカスタマイズが可能
n8nは基本的にノーコードで操作できますが、より細かい制御が必要な場合にはJavaScriptコードも記述できます。
Functionノードを使用すれば、取得したデータに対して独自の計算処理や複雑な変換ロジックを適用できます。正規表現を使った文字列処理や、配列・オブジェクトの高度な操作も自由に実装可能です。
標準ノードでは対応できない独自要件にも柔軟に対応できる点が、n8nの大きな強みです。また、外部ライブラリをインポートすることもでき、既存のJavaScriptエコシステムを活用できます。
この柔軟性により、シンプルな自動化から複雑なビジネスロジックの実装まで、幅広いユースケースに対応できるでしょう。
n8nの代表的な活用例

n8nは業種や部署を問わず、さまざまな業務シーンで活用されています。実際の現場では、どのような自動化が行われているのでしょうか。
ここからは、n8nの実践的な活用例について次の3つを紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
フォーム送信からCRM登録までの自動処理
Webサイトの問い合わせフォームに入力があった際、その情報を自動的にCRMシステムへ登録する流れを構築可能です。
n8nのWebhookノードやフォームトリガーを起点として、送信データを受け取ります。受け取ったデータは必要に応じて整形・バリデーションを行い、SalesforceやHubSpotなどのCRMに自動登録されます。
同時に担当者へSlackやメールで通知を送ることも可能です。手動でのデータ入力や転記作業が完全に不要になり、対応漏れのリスクも大幅に減少します。
この自動化により、リード情報の取りこぼしを防ぎ、初動対応のスピードを向上させられるでしょう。
監視・通知・アラートの自動送信フロー
特定の条件を満たした際に、関係者へ即座に通知するアラートシステムを構築できます。
たとえばサーバーの稼働状況を定期的に監視し、異常を検知したら担当者にSlackとメールで同時通知する仕組みが作れます。
ECサイトの在庫数が一定次になったら、仕入れ担当者へアラートを送ることも可能です。GitHubで新しいIssueが作成されたら、開発チームのチャンネルへ自動投稿するワークフローもよく使われています。
複数の通知手段を組み合わせることで、重要な情報を確実に届けられます。手動での確認作業が不要になり、トラブルへの対応時間を大幅に短縮できるでしょう。
定期レポートの集計とSlack・メール配信
n8nのScheduleトリガーを使えば、毎日・毎週・毎月といった定期実行のワークフローを作成できます。
たとえば毎朝9時に前日の売上データをGoogleスプレッドシートから取得し、集計結果をレポート形式で整形します。
整形したレポートは、SlackのチャンネルへPDFファイルとして投稿したり、メールで関係者に配信したり可能です。複数のデータソース(Googleアナリティクス、CRM、在庫管理システムなど)から情報を収集し、一つのレポートにまとめることもできます。
手作業でのレポート作成時間を削減し、データの鮮度も保てます。経営判断に必要な情報を、タイムリーかつ自動的に届けられる体制を構築できるでしょう。
n8nの始め方と導入手順

n8nを実際に使い始めるには、いくつかの方法があります。自社の環境や要件に応じて、最適な導入方法を選択することが重要です。
ここからは、n8nを始めるための具体的な手順について次の3つを紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
n8nクラウドを使って手軽に試す方法
n8nを最も簡単に始める方法は、公式が提供するクラウド版を利用することです。
n8n.ioの公式サイトにアクセスし、メールアドレスで無料アカウントを作成するだけで、すぐに使い始められます。環境構築やサーバー管理が一切不要で、ブラウザからアクセスするだけで利用可能です。
無料プランでも基本的な機能は十分に使え、個人利用や小規模チームであれば問題なく活用できます。
まずは試しに使ってみたい、という場合にはクラウド版が最適でしょう。有料プランにアップグレードすれば、実行回数の上限が緩和され、より高度な機能も利用できるようになります。
Dockerやローカル環境でセルフホストする手順
完全無料で制限なく使いたい場合や、社内環境で運用したい場合は、セルフホスト版を選択します。
Dockerを使った導入が最も簡単で、Dockerがインストールされている環境であれば数分で起動可能です。ターミナルで「docker run -it –rm –name n8n -p 5678:5678 n8nio/n8n」コマンドを実行するだけで、ローカル環境にn8nが立ち上がります。
Node.jsを使った直接インストールも可能で、より細かい設定をカスタマイズできます。自社サーバーに構築すれば、データを完全に社内で管理でき、セキュリティ要件の厳しい企業でも安心です。
初期設定では、ブラウザから「http://localhost:5678」にアクセスすれば管理画面が表示されるでしょう。
最初のシンプルなワークフローを作る流れ
n8nの環境が準備できたら、実際にシンプルなワークフローを作成してみましょう。
まず「New Workflow」ボタンをクリックして、新しいワークフローを作成します。画面右側のノードリストから「Schedule Trigger」を選び、キャンバスにドラッグ&ドロップします。
次に「HTTP Request」ノードを追加し、トリガーノードと線でつなぎましょう。HTTP RequestノードでAPIを呼び出す設定を行い、実行ボタンを押せば即座に動作確認が可能です。
結果はノード上に表示されるため、データの流れを視覚的に確認しながら開発を進められるでしょう。
n8nを導入するメリットとデメリット

n8nは強力な自動化ツールですが、導入にあたっては良い面と注意点の両方を理解しておく必要があります。自社の状況に合っているかを判断するため、客観的に評価することが重要です。
ここからは、n8n導入の判断材料として次の3つの観点を紹介します。
それぞれ詳しく解説していきます。
コストを抑えつつ高度な自動化ができるメリット
n8nの最大のメリットは、セルフホスト環境であれば完全無料で利用できる点です。
ZapierやMakeといった競合サービスは、月額数千円から数万円のコストが発生し、タスク実行数に応じて課金されます。一方n8nのセルフホスト版は、実行回数やノード数に制限がなく、ランニングコストがほぼゼロです。
さらにオープンソースであるため、自社の要件に合わせたカスタマイズも自由に行えます。高度なAPI連携やデータベース操作、AI連携まで対応しており、機能面でも有料サービスに劣りません。
初期投資を抑えつつ、本格的な業務自動化を実現したい企業にとって理想的な選択肢でしょう。
ある程度の技術知識が求められるデメリット
n8nは自由度が高い反面、使いこなすにはある程度の技術的な理解が必要になります。
基本的なノード操作はノーコードですが、API連携やデータ変換には、JSONやHTTPリクエストの知識が求められる場面があります。セルフホスト版を使う場合は、DockerやLinuxの基本的なコマンド操作の理解が必要です。
ZapierやMakeと比較すると、初心者にとってのハードルは高めです。エラーが発生した際のトラブルシューティングも、ある程度の技術スキルがないと対応が難しいかもしれません。
社内にITリテラシーの高いメンバーがいない場合は、導入に時間がかかる可能性があるでしょう。
運用・保守を見据えた設計が必要なポイント
n8nで構築したワークフローは、長期的な運用を見据えた設計が重要です。
複雑なフローを作りすぎると、後から修正や機能追加が困難になるリスクがあります。ワークフローにコメントや説明を残し、他のメンバーが理解できるようドキュメント化することが推奨されます。
セルフホスト環境では、定期的なバージョンアップやセキュリティパッチの適用も自社で管理が必要です。
また、連携先のAPIやサービスの仕様変更にも注意が必要です。運用体制や保守フローを事前に整えておくことで、安定した自動化環境を維持できるでしょう。
まとめ
n8nは、オープンソースで提供されるワークフロー自動化ツールであり、ノーコード・ローコードで業務プロセスを効率化できます。セルフホスト版なら完全無料で利用でき、実行回数や機能に制限がない点が大きな魅力です。
700以上のサービスとの連携に対応しており、SaaS同士の接続からAI連携まで幅広い自動化を実現できます。ビジュアルなフロー設計画面により、プログラミング知識がなくても直感的にワークフローを構築可能です。
一方で、ある程度の技術知識が求められる点や、運用・保守体制の整備が必要な点には注意が必要でしょう。
コストを抑えつつ本格的な業務自動化を目指す企業にとって、n8nは非常に有力な選択肢です。まずはクラウド版の無料プランで試してみて、自社の業務に適用できるか確認してみることをおすすめします。
