n8nは商用利用できる？ライセンス条件・導入方法・注意点を徹底解説

n8nは業務自動化ツールとして注目を集めており、オープンソースで無料利用できることから多くの企業が導入を検討しています。しかし、n8nは完全なオープンソースではなく、Fair-Code Licenseという独自のライセンス形態を採用しているため、商用利用には明確なルールが存在しているのです。

ビジネスでn8nを活用したいと考えても、どこまでが許可された商用利用なのか、再販売や顧客向けサービスへの組み込みは問題ないのか、セルフホストなら本当に無料で使えるのかなど、判断に迷うポイントが数多くあります。

そこでこの記事では、n8nの商用利用に関するライセンス条件を詳しく解説し、OK事例とNG事例の具体的な境界線、クラウド版とセルフホスト版の選び方、再販・組み込み利用時の注意点、そして商用利用のメリットまで、安心してn8nをビジネスに導入するために必要な情報を網羅的にお伝えします。

n8nの商用利用は可能？

n8nは業務自動化ツールとして注目を集めていますが、商用利用については独特なライセンス形態を採用しています。

ここからは、次の3つのポイントについて解説します。

それぞれ詳しく解説していきます。

n8nはオープンソース（Fair-Code License）で提供

n8nは一見すると完全なオープンソースソフトウェアに見えますが、実際には「Fair-Code License」という独自のライセンスモデルを採用しています。

このライセンスは、ソースコードを公開しながらも、開発チームが持続的に収益を得られる仕組みを両立させたものです。従来のオープンソースライセンスとの最大の違いは、商用利用に明確な制限が設けられている点にあります。

GitHubでソースコードは誰でも閲覧・改変できますが、n8nそのものを再販売したり、有料サービスとして提供することは制限されています。この仕組みにより、ユーザーは無料で利用できる自由度を享受しながら、n8nの開発チームも適切な対価を得られる環境が整っているのです。

Fair-Codeは「公正なコード」という理念のもと、開発者とユーザー双方にメリットをもたらす新しいライセンス形態として注目されています。

商用利用は「制限付きで可能」なライセンス形態

n8nの商用利用は完全に禁止されているわけではなく、「制限付きで可能」という形態をとっています。

具体的には、社内業務の自動化や効率化を目的とした利用であれば、基本的に問題なく商用利用できます。たとえば、自社のCRMとメールシステムを連携させたり、データ処理を自動化したりする用途は全く問題ありません。

また、n8nを使った業務改善コンサルティングサービスの提供や、顧客向けのワークフロー構築代行も許可されています。一方で、n8nをホスティングして顧客に有料で提供したり、自社製品として再販売する行為は明確に禁止されています。

重要なのは「n8nの価値に実質的に依存するビジネスかどうか」という判断基準で、この線引きを理解することが適切な商用利用の第一歩です。

クラウド版とセルフホスト版で条件が異なる

n8nには大きく分けてクラウド版（公式ホスティング）とセルフホスト版の2つの提供形態があり、それぞれ商用利用の条件が異なる傾向です。

クラウド版を利用する場合は、選択したプラン（Starter/Pro/Enterprise）に応じた利用規約が適用されます。セルフホスト版は基本的に無料で利用できますが、商用利用の範囲は同じくライセンスの制限を受けます。

つまり、セルフホストだから何でも自由にできるわけではなく、再販売や有料サービス化には別途ライセンス契約が必要です。ただし、社内業務での利用に関しては、セルフホスト版でも完全に無料で商用利用できるため、コスト削減を重視する企業に適しています。

クラウド版は運用の手間が少なく、セルフホスト版はデータ管理やカスタマイズの自由度が高いという特徴があり、用途に応じて選択することが重要です。

n8nのライセンス内容を理解しよう

n8nを安全に商用利用するためには、ライセンス内容の正確な理解が不可欠です。

ここからは、次の3つのポイントについて解説します。

それぞれ詳しく解説していきます。

Fair-Code License 1.0とは何か

Fair-Code License 1.0は、n8nが採用している独自のソフトウェアライセンスで、「Sustainable Use License（持続可能な利用ライセンス）」とも呼ばれています。このライセンスの基本思想は、ソフトウェアの透明性を保ちながら、開発チームが持続的に開発を続けられる収益モデルを確立することです。

オープンソースとの主な違いは、利用目的に制限を設けることが許可されている点にあります。通常のオープンソースライセンス（MITやGPLなど）では、使用制限を設けることは基本的に認められていません。

Fair-Code Licenseでは、ソースコードは完全公開されており、誰でも閲覧・改変・配布できますが、商用での再販売や有料サービス化には制限があります。

この仕組みにより、n8nは現在3,000社以上の企業顧客と約20万人のアクティブユーザーを獲得し、持続的な成長を実現しているのです。

無料利用と商用利用の境界線

無料利用と商用利用の境界線は、多くのユーザーが最も混乱するポイントです。

n8nのライセンスでは、「内部ビジネス目的（internal business purposes）」での利用は無料で商用利用できると明記されています。具体的には、自社の業務プロセス自動化、社内システム間のデータ連携、従業員向けの業務効率化ツールとしての利用などが該当します。

一方、n8nの機能に「全面的または実質的に依存」する製品やサービスを販売することは、有料ライセンスが必要な商用利用とみなされるのです。判断基準として重要なのは、「顧客が支払う対価の主な価値がn8nにあるかどうか」という点です。

たとえば、n8nを使って構築したワークフローを顧客に提供する場合、その対価がワークフロー設計のコンサルティング料であれば問題ありませんが、n8nの機能自体を提供する対価であれば制限対象となります。

ライセンス違反にならない運用のポイント

ライセンス違反を避けるための最も重要なポイントは、n8nを「自社の内部ツール」として位置づけることです。

社内の業務自動化、データ処理、システム連携など、社員が使う目的であれば基本的に問題ありません。顧客向けサービスでn8nを活用する場合は、n8nの機能を直接販売するのではなく、n8nを裏側で活用した「付加価値サービス」として提供することが安全です。

グレーゾーンに該当する利用方法を検討している場合は、n8n公式の専用メールアドレス（license@n8n.io）に事前相談することを強くおすすめします。公式ドキュメントの「Sustainable Use License」ページも必ず確認し、最新のライセンス条件を把握しておくことが重要です。

また、セルフホスト版を使用する場合でも、ライセンス条件は同じく適用されるため、「無料だから何でもOK」という認識は誤りであることを理解しておきましょう。

n8nを商用利用する3つの方法

n8nを商用環境で活用するには、用途や規模に応じた適切な導入方法を選択する必要があります。

ここからは、次の3つの方法について解説します。

それぞれ詳しく解説していきます。

n8nクラウド（公式ホスティング）を利用

n8nクラウドは、n8n公式が提供するホスティングサービスで、最も手軽に商用利用を始められる方法です。

アカウント登録だけですぐに利用開始でき、サーバー管理やセキュリティアップデートなどの運用負荷がかからない点が大きなメリットです。商用利用の場合、Starterプラン（月額20ユーロ〜）以上のプランを選択することで、ビジネス用途に必要な機能が利用できます。

クラウド版では実行回数やワークフロー数に応じて段階的なプランが用意されており、事業規模に合わせて柔軟にスケールできます。また、クラウド版ではデータのバックアップや可用性の担保が公式側で管理されるため、技術リソースが限られた企業でも安心して導入可能です。

14日間の無料トライアル期間が設けられているため、まずはクラウド版で機能を試してから本格導入を判断することも可能です。

セルフホストで独自運用する

セルフホストは、自社のサーバーやクラウドインフラ（AWS、GCPなど）にn8nをインストールして運用する方法です。

この方法の最大の利点は、社内業務での利用であれば完全無料で商用利用できる点にあります。データを自社環境内で完全に管理できるため、セキュリティやコンプライアンスの要件が厳しい業界でも安心して利用可能です。

DockerやKubernetesを使った導入が一般的で、中級以上のITスキルがあれば比較的スムーズにセットアップできます。ただし、サーバー管理、セキュリティパッチの適用、バックアップ体制の構築などは自社で責任を持つ必要があります。

長期的なコスト削減を重視する企業や、大規模な自動化を計画している場合には、セルフホスト版が最も経済的な選択肢となるでしょう。

n8nエンタープライズ契約で商用導入

n8nエンタープライズ契約は、大規模組織や高度な商用利用を想定した最上位プランです。

このプランでは、無制限の共有プロジェクト、200以上の並列実行、SSO（シングルサインオン）対応など、エンタープライズグレードの機能が利用できます。特に重要なのは、n8n Embedやカスタムライセンスなど、製品への組み込みや再販に関する特別な権限が付与される点です。

自社SaaSの機能としてn8nを統合したい場合や、顧客にn8nのUIを直接提供したい場合には、このエンタープライズ契約が必須です。料金は個別見積もりとなり、利用規模や必要な機能に応じてカスタマイズされたプランが提案されます。

専任のサポートチームによる技術支援や、SLA（サービスレベル保証）も含まれるため、ミッションクリティカルな業務での利用にも対応できる体制が整っています。

n8nを再販・組み込み利用する際の注意点

n8nを自社サービスに組み込んだり、顧客向けに提供したりする際には、特別な注意が必要です。

ここからは、次の3つの重要ポイントについて解説します。

それぞれ詳しく解説していきます。

再販・SaaS統合にはライセンス契約が必要

n8nを自社製品として再販売したり、SaaSサービスの機能として組み込んだりする行為は、標準ライセンスでは明確に禁止されています。

これは「n8nの価値に実質的に依存するビジネス」とみなされるためで、このような用途には別途ライセンス契約が必要です。n8n公式では「n8n Embed」という商用向けプログラムを提供しており、これを利用することで合法的に製品統合が可能になります。

具体的な禁止事例としては、n8nをホワイトラベル化して販売すること、n8nをホスティングしてアクセス権を有料で提供することなどが挙げられます。たとえば、自社でサーバーを用意してn8nを動かし、「私に月額料金を払えばn8nが使い放題」というサービスを提供する行為は明確なライセンス違反です。

ただし、n8nに相談することで、条件次第では公式に許可を得られるケースもあるため、まずは事前相談することが重要です。

ブランド利用・改変時のガイドライン

n8nのソースコードを改変して独自ツールを開発すること自体は、Fair-Code Licenseで許可されています。

しかし、改変したツールをあたかも自社が一から開発した製品のように見せかけて販売することは、ライセンス違反となる可能性があります。n8nのブランドやロゴを使用する場合も、公式のブランドガイドラインに従わなければなりません。

適切な表示としては、「Powered by n8n」のようなクレジット表記を含めることで、n8nを基盤技術として使用していることを明示する方法が推奨されます。ソースコードの改変を行う場合でも、n8nの著作権表示やライセンス文を削除してはいけません。

また、n8nの名称を自社製品名に含める場合（例：「〇〇 for n8n」）も、誤解を招かないよう公式との関係性を明確にすることが求められます。

クライアント案件での利用可否の判断基準

Web制作会社やシステム開発会社が、クライアント案件でn8nを活用する際の判断基準は、「何に対して対価を受け取るか」という点にあります。

ワークフロー設計や構築サービスの対価として料金を受け取る場合は、基本的に問題ありません。

たとえば、クライアントの業務フローをヒアリングし、n8nを使って最適なワークフローを設計・構築するコンサルティングサービスは許可されています。一方、n8nのインスタンスをホスティングして、そのアクセス権や利用権を販売する行為は制限対象となります。

判断が難しいのは、クライアントの環境にn8nをセットアップする「導入支援サービス」ですが、これは作業対価であり、n8n自体を販売しているわけではないため問題ないとされているのが現状です。

グレーゾーンに該当する場合は、契約書に「n8nは無料のオープンソースツールであり、当社はその導入・運用支援を提供する」旨を明記することで、トラブルを回避できます。

n8n商用利用での費用とプラン選択

n8nを商用環境で運用する際のコストは、選択する導入方法によって大きく異なります。

ここからは、次の3つの観点から費用について解説します。

それぞれ詳しく解説していきます。

クラウド版の商用向けプラン概要

n8nクラウド版には、用途と規模に応じた3つの商用プランが用意されています。

Starterプランは月額20ユーロ（約3,000円）から利用でき、小規模なチームや個人事業主に適したエントリープランです。Proプランは月額50ユーロ（約7,500円）で、3つの共有プロジェクトと20並列実行が可能になり、中小企業の本格的な業務自動化に対応可能です。

Enterpriseプランは料金が個別見積もりとなり、無制限の共有プロジェクト、200以上の並列実行、専任サポートなどが含まれます。年間契約を選択すると月額料金が約17%割引されるため、長期的な利用を前提とする場合はコスト削減につながります。

また、すべてのプランで実行回数は無制限となっているため、Zapierなどの従量課金型ツールと比較すると、コストの予測可能性が高い点も商用利用での大きなメリットです。

セルフホスト運用にかかるコスト

セルフホスト版のn8n本体は無料で利用できますが、運用には別途インフラコストと人的コストがかかります。

一般的なケースでは、AWS EC2やDigitalOceanなどのVPSを使用し、月額10〜50ドル程度のサーバーコストが発生します。大規模な自動化を行う場合でも、年間のインフラコストは数万円〜十数万円程度に抑えられることが多く、クラウド版と比較して大幅なコスト削減が可能です。

ただし、サーバーのセットアップ、セキュリティ設定、定期的なアップデート作業などに、技術者の時間が必要になります。中級以上のITスキルを持つ担当者が社内にいれば、初期セットアップは数時間〜1日程度で完了し、以降の運用は月数時間程度の保守作業で済むことが一般的です。

長期的に見れば、実行回数が多い企業ほどセルフホスト版のコストメリットが大きくなるため、スケールを見越した判断が重要になります。

商用利用を見越した最適プランの選び方

最適なプラン選択は、「技術リソース」「セキュリティ要件」「コスト」の3つの軸で判断することが重要です。

技術リソースが限られている企業や、すぐに導入したい場合は、クラウド版のStarterまたはProプランから始めることをおすすめします。一方、データを外部に出せない業界（金融、医療など）や、大規模な自動化を計画している企業には、セルフホスト版が最適です。

具体的な目安として、月間実行回数が数千回を超える場合や、複数チームで大量のワークフローを運用する場合は、セルフホスト版の方がコスト効率が良くなります。

また、まずはクラウド版で機能検証を行い、本格導入時にセルフホストに移行するという段階的アプローチも有効な戦略です。将来的に顧客向けサービスへの組み込みを検討している場合は、初めからEnterpriseプランでn8n Embedの利用を視野に入れたプランニングが必要になるでしょう。

n8nを商用利用するメリット

n8nを商用環境に導入することで、企業は多くの具体的なメリットを享受できます。

ここからは、次の3つの主要なメリットについて解説します。

それぞれ詳しく解説していきます。

自動化コストを大幅削減できる

n8nの商用利用における最大のメリットは、他の自動化ツールと比較して圧倒的にコストを削減できる点です。

Zapierなどの従量課金型ツールでは、実行回数が増えるほど月額料金が跳ね上がり、本格的な業務利用では月額数万円〜数十万円のコストが発生します。一方、n8nのクラウド版は実行回数無制限で月額20ユーロから利用でき、セルフホスト版なら完全無料で社内業務を自動化することが可能です。

実際の導入企業の事例では、Zapierから移行することで年間数百万円のコスト削減を実現したケースも報告されています。特に、データ処理や定期実行タスクが多い企業では、従量課金の制約から解放されることで、自由に自動化を拡大できるようになります。

初期導入コストを含めても、多くの企業が6ヶ月〜1年以内にROI（投資対効果）を達成しており、長期的な費用対効果が非常に高いツールといえるでしょう。

顧客・社内両方の業務効率を向上

n8nを活用することで、社内の業務効率化だけでなく、顧客向けサービスの品質向上も同時に実現できます。

社内では、営業データの自動集計、問い合わせ対応の効率化、レポート作成の自動化など、あらゆる定型業務を自動化できます。顧客向けサービスでは、n8nを裏側で活用することで、リアルタイムな通知機能、データ連携の自動化、カスタマイズされた業務フローの提供が可能です。

たとえば、Web制作会社であれば、クライアントのWebサイトとCRMを自動連携するソリューションを提供し、差別化されたサービスとして訴求できます。また、n8nのビジュアルなワークフロー画面は、非エンジニアの顧客にも理解しやすく、提案資料や説明時のツールとしても効果的です。

社内の業務時間を大幅に削減できるため、その分の人的リソースを顧客対応やコア業務に振り向けることができ、結果として企業全体の生産性が向上します。

独自ノード開発で自社独自の価値を提供

n8nはオープンソースであるため、独自のカスタムノードを開発して機能を拡張できる点も大きな商用メリットです。

標準で提供されている400以上のノードに加えて、自社独自のシステムやAPIと連携するノードを開発することで、競合にはない独自の自動化ソリューションを構築できます。カスタムノードはTypeScriptで開発でき、開発したノードをnpmパッケージとして公開すれば、それ自体を有料で販売することも可能です。

たとえば、特定業界向けの専門的なSaaSとn8nを連携するカスタムノードを開発し、そのノードとコンサルティングをセットで提供するビジネスモデルも成立します。また、クライアント企業の独自システムに対応したノードを受託開発することで、高付加価値なシステム連携サービスを提供可能です。

この拡張性の高さは、単なる自動化ツールとしてではなく、自社のビジネスモデルに組み込める「プラットフォーム」としてn8nを活用できる可能性を示しています。

まとめ

n8nは制限付きながら商用利用が可能で、社内業務の自動化であればセルフホスト版を完全無料で利用できます。

Fair-Code Licenseという独自のライセンス形態により、n8nの価値に実質的に依存するサービスの再販売は制限されますが、コンサルティングや構築代行などは問題なく行えます。

クラウド版とセルフホスト版のどちらを選ぶかは、技術リソースやセキュリティ要件によって判断し、再販や製品統合を検討する場合はエンタープライズ契約やn8n Embedの利用が必要です。Zapierなどの従量課金ツールと比較して圧倒的にコストを削減でき、カスタムノード開発による独自価値の提供も可能です。

商用利用の境界線に迷った場合は、公式の相談窓口（license@n8n.io）に事前確認することで、ライセンス違反のリスクを回避できます。

適切にライセンスを理解し、用途に応じたプランを選択することで、n8nは企業の業務効率化と競争力強化に大きく貢献するツールとなるでしょう。