生成AIの作成物に著作権はある?侵害例&活用時の注意点まとめ
ChatGPTやGeminiといったサービスの登場を機に、生成AIを使おうと考えている人は多いですよね。すでに生成AIサービスを利用してみた人もいるのではないでしょうか。
そんななか、生成AIを使ううえで気になるのが著作権。最近ではChatGPTで「ジブリ風の画像」が作れると話題になりましたね。しかし実際のところどこまで自由に生成AIで画像や動画を作って良いのか、あいまいな人もいるはず。
生成AIの作成物に関する著作権について知らないままサービスを使い続けていては、いつの日かトラブルに巻き込まれかねません。もちろん「知らなかった」では通用しないからです。
そこで本記事では判断基準や事例も交え、生成AIの作成物における著作権を解説します。著作権を侵害しない適切な生成AIの使い方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- 生成AIを道具として使用すると著作権発生
- 類似性と依拠性が認められると著作権侵害
- 生成AIが著作物を学習することは問題ない
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生成AIの作成物に著作権はある?
生成AIを道具として利用した場合、その作成物には著作権が発生します。
使い方 | 著作権 |
---|---|
生成AIを道具として利用 | 生成AIツールを利用した人に発生 |
AIが自律的に生成(簡単な指示も含む) | 著作権は発生せず、誰のものでもない |
なお、ここでいう「道具として利用した」と判断されるには、下記2つの条件を満たす必要があります。
条件 | 具体例 |
---|---|
創作意図 (何かを表現しようとする意思があったかどうか) | SNS広告用の広告バナーを作成したいと思って生成した |
創作的寄与 (生成の過程や内容に、人が関わっていたか) | 表現を意図どおりに近づけるため、プロンプトを調整しながら繰り返し生成する |
生成AIに関する著作権のルールはまだ不確定な部分が多く、今後の裁判例によって変わる可能性があるため注意が必要です。
参考:文化庁「AIと著作権」
生成AIの作成物が著作権を侵害するとどうなるのか
生成AIで作成したコンテンツが著作権を侵害していた場合、状況に応じて下記いずれかの対応を取る必要が生じます。
法的対応の種類 | 要件 | 罰則 |
---|---|---|
差止請求 | 故意・過失を問わず侵害していれば | 公開停止、削除の請求など |
損害賠償請求 | 故意または過失がある場合 | 被害額に応じた賠償金の請求 |
刑事罰 | 故意がある場合 | 10年以下の懲役 1000万円以下の罰金 又はその両方 ※法人は3億円以下の罰金 |
参考:e-Gov「著作権法」
著作権侵害は刑事罰の対象となるのが特徴です。生成AIは便利な反面、著作権への配慮が不足すると重い処分の対象になる可能性があるため注意しましょう。
刑事罰や損害賠償に至らなくても、裁判になればニュースやSNSで取り上げられ、企業の評判に影響するおそれがあります。罰則の有無にかかわらず、著作権を侵害しない意識が重要です。
生成AIの作成物が著作権侵害にあたる2つの基準

ここからは生成AIの作成物が著作権侵害にあたるかを判断する基準を、2つにまとめて解説します。
なお、文化庁では生成AIの作成物が著作権侵害にあたるかは、通常の作品と同じく「類似性」と「依拠性」の双方を満たすかで判断する、と述べています。
AIを利用して画像などを生成した場合でも著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を書いた場合などの通常の場合と同様に判断されます。→「類似性」及び「依拠性」による判断
引用:文化庁「AIと著作権」
判断基準1:類似性があるか
類似性とは、既存の著作物とどれくらい似ているかを判断する基準です。例えばキャラクターの顔の形や衣装・構図などが組み合わさって共通している場合、類似性が認められる可能性が高いです。
類似性が認められた例として次のようなケースがあります。
人形を肌色一色で表現した上,人形の体型をA型にして手足を大きくすることで全体的なバランスを保ち,手のひらの上に載せた物が見る人の目をひくように強調するため,左手の手のひらを肩の高さまで持ち上げた上,手のひらの上に載せられた物を人形の半身程度の大きさに表現するという表現方法
引用:平成15年(ワ)第4779号損害賠償請求事件
ただし、アイデアやありふれた表現が似ているだけでは、類似性が認められないケースもあります。
「既存の他人の著作物と同一、または類似している」と言うためには、他人の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」が必要です。
引用:文化庁「AIと著作権」
また、「創作的表現」が共通していることが求められ、アイディアのような表現でない部分や、創作性のない要素が共通しているだけでは、類似性は認められません。
ただし、似ているからといってすぐに著作権侵害になるわけではありません。例えば次の点が似ていても、著作権侵害とならない可能性が高いです。
- 本を擬人化するというアイデア
- カエルのイラストが緑色
しかし生成AIは人の手で制作した作品と違い、思いがけず既存の作品と本質的な特徴が似ていることもあります。
判断基準2:依拠性があるか
前述の類似性があるだけでは、著作権侵害とならない可能性が高いです。既存の著作物を知っていて、それをもとに制作したと判断される依拠性も必要です。
例えば他人の作成物を参考にしたうえで作成物を描いた場合には、依拠性が認められる可能性があります。
被告P2は,原告のホームページにアクセスし,原告イラストに依拠して被告イラスト1を作成したと推認される。
引用:平成27年9月10日判決言渡
一方で元の作品をまったく知らず偶然似たものを制作していた場合には、依拠性がないと判断される可能性が高いです。依拠性の有無は状況に応じて個別に判断されます。
「既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はない」
引用:民集第32巻6号1145頁
生成AIを用いる場合も、元の作品を知っていたかどうかが重要なポイントです。また、似せようとしたプロンプトの入力があったかなどが論点になります。
生成AIによる著作権侵害事例3選

ここからは生成AIの作成物が著作権を侵害した事例を3つ紹介します。
ウルトラマン画像の著作権侵害事例
ウルトラマンに酷似した画像を生成・公開した中国のAI事業者に対し、円谷プロダクションが著作権侵害で訴えを起こしました。2024年2月、中国の裁判所は著作権侵害を認め、損害賠償の支払いと画像生成の差し止めを命じています。
生成AIによる著作権侵害について、世界で初めて司法判断が示された事例とされています。中国の裁判所は、キャラクターの特徴的な表現が部分的または完全に複製されていると判断しました。
今回はAIの提供者が訴えられましたが、今後は利用者にも責任が問われる可能性があります。生成AIの利用が広がるなか、著作権との関係をあらためて意識させられる事例となりました。
参考:Chinese Court Takes on First Copyright Case Against Generative AI Platform
Getty Imagesが画像生成AI運営会社を訴訟した事例
2023年1月、アメリカの大手ストックフォトサイト「Getty Images」が、画像生成AI「Stable Diffusion」を開発したStability AIを著作権侵害で提訴しました。
Getty Imagesは1,200万点以上にのぼる自社の画像やキャプションなどが無断で学習に使われたと主張しています。生成された画像の中には、Getty Imagesの透かし(ウォーターマーク)が表示されている例も確認されたといいます。
たとえ生成AIによって作られた画像であっても、Gettyのロゴが含まれていれば誤解を招くおそれがあります。現在も裁判は進行中であり、利用者側にとっても注意したい事例です。
参考:Getty Images lawsuit says Stability AI misused photos to train AI
ニューヨークタイムズがChatGPT運営会社を訴訟した事例
2023年12月、アメリカの大手新聞社ニューヨーク・タイムズ(NYT)がChatGPTの開発元であるOpenAIと、その出資企業であるマイクロソフトを著作権侵害の疑いで提訴しました。NYTはOpenAIのAIが数百万件にのぼる自社の記事を無断で学習に利用し、損失を被ったと主張しています。
OpenAI側は、報道や研究など特定の目的であれば著作物を使える「フェアユース(公正利用)」の範囲内だとして反論しています。
判決はまだ出ていませんが、広く使われているChatGPTをめぐる訴訟のため、今後の著作権ルールやAIの利用実務に影響を及ぼす可能性があります。
参考:米紙ニューヨーク・タイムズがオープンAIとマイクロソフトを提訴 著作権侵害で
著作権を侵害しない適切な生成AIの使い方

前述した類似性や依拠性がある場合でも、著作権侵害とならずに作成物を利用できるケースがあります。
そこでここからは著作権を侵害しない適切な生成AIの使い方を、2つにまとめて解説します。
権利者から許諾を得る
著作権を侵害しないための方法の1つ目は、権利者から許諾を得ることです。生成AIで作成した画像や文章が他人の著作物と類似していても、元の作品の権利者から事前に使用許諾を得ていれば著作権侵害にはなりません。
例えば他人のイラストや写真素材を一部取り入れて作品を生成する場合、事前に許諾を取っておけばその生成物を公開したり販売したりできます。
商用利用を前提とする場合は、契約書などで許諾の内容を得ておくことが重要です。ただし許諾があっても利用範囲が制限されている可能性があるため、契約内容を正しく理解して使用する必要があります。
参考:e-Gov「著作権法」
権利制限規定の範囲内で使う
権利制限規定とは、著作権者の許諾がなくても法律上の要件を満たせば著作物を利用できると定めた制度です。主な要件は次のとおりです。
- 私的使用
- 引用
- 学校その他の教育機関での利用
- 非営利、無料、無報酬等
権利制限規定は著作権を保護しつつ、教育・研究・情報共有など社会的な利益も守るために設けられています。
生成AIで他人の著作物に関わるコンテンツを扱う場合、利用目的が規定に該当するならば、著作権侵害を避けて適切に取り扱えます。
参考:e-Gov「著作権法」
上記を踏まえ、代表的な生成AIツール「ChatGPT」の使い方を詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。

生成AIが他人の著作物を学習することは問題ないか
使う側が著作権侵害に当たらない場合でも、生成AIが他人の著作物を学習していることに法的な問題がないか、AIツールの使用自体に不安を感じてはいませんか。
2025年現在、生成AIが他人の著作物を学習することは、原則として問題ないと解釈されています。
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情をみずから享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
引用:文化庁「AIと著作権」
あくまでデータとして処理する目的であれば、法的に問題ないと解釈されているのです。一方で、音楽や映画などの著作物を楽しんだり楽しませたりする目的で学習する場合などは問題になる恐れがあります。
今後の法改正や裁判での判断によっては解釈が変わる可能性もあるため、常に最新の動向を確認しておく必要があります。
まとめ
生成AIを利用する際は、著作権との関わりは避けては通れません。作成物に著作権があるかは人が創作意図を持ち、道具として使ったかどうかによって判断されます。
著作権侵害にあたるかどうかは、既存の著作物との類似性と依拠性の双方が認められるかが判断のポイントとなります。リスクを避けるためにも利用前にルールを確認し、必要な許諾を得るなどの対応を心掛けましょう。